【掌編】歴史ミステリー風

※童謡の「かごめかごめ」の歌詞を個人的で勝手な解釈をしたものを元に、書いています。
ご了承ください。

 ―かこめかこめ

 「囲め、囲めぇい!」
 明智光秀の馬上からの号令に従い、にひたひたと押し寄せる軍勢がある。

 ―かごの中の鳥は
 ぐっと口を引き結び、本能寺を睨みつける光秀の元に明智秀満が駆けてくる。
「殿! 包囲はすでに完了、信長公はもはや駕籠の鳥!」

 ―いついつ出遣る
 ご命令を、と、言う秀満に、光秀はうむ、と頷きつつも
「信長公が討ってでるやもしれぬ。心せよ」
 念を押した。

 ―世分けの晩に
 続々と届く知らせに、家康はなんとも言えぬ複雑な笑みを浮かべていた。
「たった一晩の出来事で、こうも世の中がかわってしまうとはな……」

 ―鶴と亀が滑った
 本能寺で信長が討たれ。
 信長を討った光秀も秀吉に討たれた。
 続々と報が入ってくる。
 日の本の絵図を広げ、家康はふうむ、と唸った。
「此度の出来事の黒幕は誰だと皆は考えるのか」
 後ろから光秀を操った者。
 あれも、これも。
「皆、心当たりがありすぎて困っておるそうで。面白いことになってき申したの」

 ―後ろの正面だぁれ……
 低く笑う家康の後ろには。
 座敷牢に籠められた、満身創痍の織田信長。
 憎しみに満ちた双眸が、家康の背中を刺し貫いていた。

【終】
Copyright (c) 2012 akatuki kouga All rights reserved.
 

-Powered by HTML DWARF-