ヴァンパイアのハロウィン
こんなはずでは、なかった。
俺様は、ヴァンパイアである。ゆえに、これは仮装ではなく正装である。
人間界に出てきたのはハロウィンパーティーに参加するためではなくて……ヴァンパイアにするための娘を選びに――。
だが――。
「ちょっと、ヴァンパイア! 突っ立ってないでこれ運びなさいよ」
「……ハイ」
可愛らしい魔女の装束を身に着けているが中身は本物の魔女よりはるかに恐ろしい少女に掴まってしまった。
俺様が声をかけた美少女(10歳)は偶然にも、大鎌、木の杭、銀の弾丸がこめられた拳銃を装備していた。
今も、俺様の腹に拳銃を突きつけて、悪鬼も逃げ出す形相でにらんでいる。
「ロリコン、働け」
「わ、本物の銃みたい!」
「カッコいい!」
通りすがりにミイラ軍団が口々に褒める。
何がかっこいいモノか。これは本物、弾丸が発射されれば俺様は即死だ。ふと、本物のミイラが一体混ざっている事に気付いた。楽しそうである。
「物好きな……」
「何か?」
「いえ、何も……ごしゅじんさま……」
働け、と顎をしゃくる魔女。
「こんな乱暴なご主人様、嫌だ!」
「警察に突き出されたくなきゃ、働け!」
木靴で尻を、蹴飛ばされた。
ううっ、早く終わってくれ、ハロウィン――。
――――あとがき―――
ハロウィンの時期に書いた、ヴァンパイアの一人語り、でした。
空白や改行を含まない文字数500文字ぴったりに仕上げたようです。
以前、「小説家になろう」にあげていたものと同じものです。
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